第24回自主制作映画フェスティバル!

名古屋シネマテークでは、毎年、年末に“自主製作映画フェスティバル”という映画祭を開催されています。第24回ということは、今年でなんと24年目!
この映画祭は、様々なプログラムの中に、公募作品の上映があります。その名も「何でも持ってこい!」。
チラシから引用すると、“デスクトップで編集され、モニターの中で完成された作品をスクリーンに解放しよう!”とあります(※作品提出は12/2締め切りでした)。こういった、参加型、観客との連携・働きかけがなされているところにも、大変勉強させられました。
A〜Eまでの5つのプログラム(全8作品)と、「何でも持って来い!」の作品群がちりばめられた自主製作映画フェスティバル、まもなくです。
期間:2010年12月23(木)〜25日(土)
WEB:http://cineaste.jp/(左の上映スケジュールからページ開けます)
※本作上映のCプログラム(FURUSATO2009/デルタ)は 12/24(金)16:00、25(土)18:30 の2回上映です。

仲田恭子

小川国夫&司修の仕事

司修さんが手がけた小川国夫関連の仕事として、何をご紹介しようか
と思って探しましたが、まずは、コレ。
2008年4月8日に小川国夫さんが亡くなったとき、
すでに予定されていて、没後に“遺作随想集”として刊行された
『虹よ消えるな』(講談社)です。
司さんは、この本のカバーと扉の装画、装幀を手がけています。
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この本には、実は、映画『デルタ』プロデューサー仲田恭子の名前が登場します。
「骨折以降」という文章の後半に、出てきます。
小川さんは仲田演出の舞台を、藤枝市の蓮花寺池公園の畔にある野外劇で観たそうです。
するといきなり現われたシーンは、山の木だちのあい間に陣取った狐の群れでした。その狐こそ、退行に退行を重ねる私のかなたの極点にいる生き物と思えてきました。
と小川さんは(仲田演出の劇について)書いています。
そして、幼い日に聞いた狐の鳴声を鮮明に思い出して、
「退行の何なのかを教え、目を開かせ」られた、とつづけます。
今や私は忘却の霧のなかから、多くの宝を呼びもどしている、これは退行ではなくて、帰還だ、そのうちに私は、自分の生涯よりもはるかに広い時間の中に自分を解きはなつことができるだろう。
もともとは亡くなる9ヶ月ほど前に「日本経済新聞」に発表された原稿ですが、
こうやって書きながら、晩年の小川国夫のペンが伝えてくれる迫力をあらためて感じています。
下窪俊哉

幻想的で、現実的な小説

映画『デルタ 小川国夫原作オムニバス』、大阪シネ・ヌーヴォでの公開まで、
ちょうど残り2週間となりました!
先日のイベント“sdhellsong~耳よ、貝のように歌え”をご覧になった方にも
「小川国夫、知らなかったけど、読んでみてもいいな~」と思われている方が
少なからずいらっしゃると思います。(そう願います)
でも、いきなりどこから読めばいいのか、と言われてふと思い出したのが、
短篇小説のアンソロジー。つまり、複数の作家の小説を集めた本です。
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これはそのひとつ。2001年6月から数年かけて刊行された講談社文芸文庫の
『戦後短篇小説再発見』というシリーズの第1巻です。
ここに、太宰治「眉山」、三島由紀夫「雨のなかの噴水」らと並んで
小川国夫「相良油田(さがらゆでん)」が収録されています。
(もともとは『アポロンの島』につづく第二作品集『生のさ中に』に収録されていた
珠玉の短篇ですが、現在、絶版状態がつづいています。)
憧れの(?)美人教師に「御前崎に油田がある」とデタラメを言った少年(浩)が、
ふたりで油田を探しに行く話ですが、途中から夢と現実が交錯したような世界に
どんどん踏み込んでいく。こんな言い方は危険かもしれませんが、
いかにも小川国夫らしい作品と言ってもいいかもしれません。
※12/21(火)シネ・ヌーヴォ公開初日(19時~)上映後に、
 小川国夫さんとも親交が深かった画家・作家の司修さんをゲストに
 スペシャルトークショーを開催します!どうぞご期待ください!

下窪俊哉

関西上映先行イベント、無事終了!

昨日の“shellsong~耳よ、貝のように歌え”にご来場くださった皆様、
誠にありがとうございました!
詳しい報告は、またあらためて、ということにして…。
映画『デルタ 小川国夫原作オムニバス』、いよいよ12/21(火)から
大阪シネ・ヌーヴォで公開になります!

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初日のみ夜の上映で、上映後にはスペシャル・トークショーを予定しています。
ゲストは、画家・作家の司修さん!
司さんは、小川国夫さんの著作の装幀、装画をたくさん手がけられ、
生前の小川さんと親交の深かったひとりです。
映画『デルタ』プロデューサーで、これまで小川作品をたびたびとり上げてきた
舞台演出家の仲田恭子が対談相手をつとめます。
また、名古屋シネマテークでは、第24回自主製作映画フェスティバルにて
「他界」監督の高野貴子が所属する映像制作集団空族のドキュメンタリー『FURUSATO2009』
とセット上映されます!
こちらも請うご期待ください!
詳細、また少しずつご紹介していきますね!
下窪俊哉

shellsong前夜

12/5(日)開催の関西上映先行イベント“shellsong~耳よ、貝のように歌え”がいよいよ明日開催されます。
今日は一日、会場を設営を主催者DOOM!と、ふだん映画館で働く応援隊の支援を受けて行いました。
今回のイベント準備は、イベントタイトルが示すように、「音」にこだわってやってました。言葉や音楽の分子としてある前に、まず物理的な「音」を体感してもらえるよう、劇場に設置されたスピーカーを用いず、自分たちで4台を設置し、映画をかけていきます。
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単に音量を大きくすることが目的ではありません。作品と向き合うなかで、作品の可能性を引き出し得るために出来ることをやる、というごく当たり前のことをやるためです。
映画『デルタ』を織りなす三本の作品がどのように受け手のなかに届くのか。それを想像することはやはりなによりも楽しい時間です。
来て頂いた方にとっても、楽しい時間となることを心より願っています。
井川 拓

えんがわおしゃべり相談会

12/5(日)開催の関西上映先行イベント“shellsong~耳よ、貝のように歌え”の
スペシャルゲストの倉田めばさんが講師をなさった「えんがわおしゃべり相談会」に参加してきました。
「えんがわおしゃべり相談会」はココルームが企画し、大阪西成にある「カマン!メディアセンター」で約半年で22回のプログラムが組まれています。参加費は無料。様々な分野で活躍する人が講師となって、あるテーマを参加者全員で相談する場です。
僕がついたときはもう倉田めばさんの話は終わっていて残念でしたが、今回のテーマ「わたしにとっての依存」を参加者全員が話し合う場にいられたのは、とても貴重な体験でした。小さな机を囲って、みんながお互いの顔を眺め、膝をつき合わせて話を聴いていると、耳が敏感になっていると感じました。自分だけに向けられたのではないけれど、その場に居合わせたひとりひとりに届けたいと願って語られる言葉は、切実でありながら、どこかおおらかでした。言葉はときに横道にそれ、ときに宙を舞い、ときに途切れましたが、しばらくすると車座のなかにちゃんと戻ってきていました。相談ってこうやってやってたよな…。そう思い出した時、自分の耳が日常のなかでいかに塞がっているかにも気付きました。
帰りに、参加者連れ立て、価格・味ともにグッドな中華料理店でラーメンを食べました。「台湾ラーメン」380円也。
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「台湾ラーメンって名古屋発祥らしいよ」
確かに言われてみれば、甘辛いスープが手羽先を思い起こさせもします。
こういう記憶がずっと残るようを祈りながら、スープを平らげました。
“shellsong”まであと二日となりました。今日は、耳そうじを念入りにして眠ることにします。
See you!
井川 拓

『あなのかなたに』

12/5(日)開催の関西上映先行イベント“shellsong~耳よ、貝のように歌え”の
スペシャルゲストのひとり、湯浅学さんの小説『あなのかなたに』(扶桑社)を少し紹介させていただきます。
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『あなのかなたに』は扶桑社の雑誌「en-taxi」に掲載された原稿を元に、2009年に刊行されました。帯に「80年代を音楽とともに駆け抜けた自伝的音楽小説」とあるように、ある視点から見つめた自身の姿(猫田正夫)と特定の時間(1980年代)とが克明に描かれています。
膨大な量の音楽家とレコードの名前が載っていますが、僕には音楽小説とは思えませんでした。仮に80年代の音楽を全く知らない人が読んでも、全く問題にはならないでしょう。むしろそういった人のほうが、この小説の一見闇鍋的な文体のなかに紡がれる声をしっかりと聴くことができるかもしれません。それは正夫が恋した女の声です。名前も付けられていない「あの女」の声はすべて正夫の回想のなかで、そのほとんどが受話器の向こう側から聴こえる声として、具体的な音楽とともに蘇ってくるのです。
一節、引用させていただきます。
「そうかLPあの女に貸したまんまだ」ほかには猫しかいない部屋で正夫は大きな声でそういった。あんたは聴いたんだからもういいでしょ。このジャケット最高よね。このバンドやっている人大竹シンローっていうんだって。先に聴かせてやったんだから、よかったでしょ、喜びなさいよ。
「あの女」の声はいつも一方的で、身勝手で、ささくれだっている。なのに正夫がいつまでも「あの女」を忘れることが出来ないのはどうしてなのか。それは最後に「あの女」が正夫にいった言葉が優しすぎたのかもしれません。
ひとが持つ「あな」のなかで唯一伸縮も閉じることのできない器官を通ったものは何処へゆくのか、そんなことに思いを馳せさせる一冊です。
井川 拓

『ノリピーよ、ダルクにおいで!』

12/5(日)開催の関西上映先行イベント“shellsong~耳よ、貝のように歌え”の
スペシャルゲストの倉田めばさんの活動を少し紹介させて頂きます。
11月27日のブログで、倉田めばさんが「大阪ダルク」代表として、薬物依存者のピア・サポートを行っておられることを書きましたが、「ドラッグ」をタブー視し、忌避する傾向の強い日本では、「ダルク」の認知度はまだまだ低いようにも思えます。
「ダルク」は日本だけでなく、世界中にある施設ですが、一つの共通の理念を実践していく場であると倉田めばさんから教わりました。それは「薬物依存者に言葉を取り戻していく場」であるということです。
その具体的な内容・メソッドについて書くことは僕にはできませんが、薬物依存者に限らず、いま僕らひとりひとりが「言葉を取り戻していく場」をつくっていかなければならないのではないかと考えさせられました。
W・バロウズは「社会の中毒者」もジャンキーであると言いました。寄りかかっているものを見つめ、歩を止め、耳を傾けなければ気付けないこと、それが生きてゆく糧になる時もあるのではないかと思えるのです。
倉田めばさんは、いろんな場所へ出かけられます。薬物依存者が投獄された刑務所、精神病院、それに酔っ払いが集う大阪の路地での「えんがわおしゃべり相談会」……。
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「言葉を取り戻していく場」、そこが倉田めばさんのホームグラウンドなのです。
12月5日のイベント”shellsong”もそのような〝場”にしていきます。是非お楽しみに!
(※写真は既に終了したイベントのものです。本記事タイトルは、大阪ダルクでの最近の合言葉らしいです。)
井川 拓

“shellsong”直前!

映画『デルタ 小川国夫原作オムニバス』関西上映先行イベント
“shellsong~耳よ、貝のように歌え”が、迫っております!
私は東京から書いているのですが、大阪では毎日、その準備に追われています!
慌ただしいなか、でも穏やかな? 楽しそうな? 雰囲気も伝わってきて、
何やら素晴らしいイベントになりそうな予感がします。
皆様、どうぞご期待ください!
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というわけで、このスタッフブログ、
今週は大阪を走り回っている井川拓より、毎日のように
“shellsong”の蔵出し情報???が飛び出す予定です。
下窪俊哉

湯浅湾『浮波』

12/5(日)開催の関西上映先行イベント“shellsong~耳よ、貝のように歌え”の
スペシャルゲストのひとり、湯浅学さんについて少し紹介をさせて頂きます。
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湯浅学さんは「音楽評論家」という肩書を付されることが多いですが、「湯浅湾」というフォーク・ロックバンドを率いて、歌とギターを担当されています。ひょっとしたら、湯浅さんの文章は読んだことはあるけど、音楽は聴いたことはないという方は多いかもしれません。僕もそうでした。途方もない音楽への憧憬を抱き続け、それを誰にも真似できぬやり方で言葉に発露してきた人間が、果たして自ら歌う必要があるのだろうかという疑念と不安があったのです。
湯浅さんが本腰を入れてギターを練習し歌い始めたのは、三十六歳のときだったと聞いています。もう既に「音楽評論家」としての地位を確立し、多方面から注目を集めていた時期です。にも拘わらず、書く仕事の量が減るのも知りながら、湯浅さんは歌い始めました。
「湯浅湾」の音楽を聴いたとき、自分の矮小な思いは見事に裏切られました。
「ふとある日…」と歌いだされる声は、語りかけてくるようでいながら、くぐもった滲みが耳に残りました。笑い涙を誘うほど情感豊かなのに、発散・解放はしてくれない。聴き終わると、しばらく何も手につかない。突然尿意を催したり、無性に腹が減ったり、不意に家族と話したくなったりしてしまうのです。だからこそ、「湯浅湾」は、フォーク・ロックバンドなんだと思うのです。生きることはどこを切ってもくだらなくやるせなく、だからこそいとおしいことを思い起せる、そんな音楽はそうざらにはありません。
“shellsong~耳よ、貝のように歌え”では、湯浅学さんに朗読にギターを交えたパフォーマンスを行って頂きます。
歌を歌わない湯浅学さんがどんな声を響かせるのか、ぜひ耳を傾けて下さい。

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※12月15日、湯浅湾のライブアルバム『浮波(フナミ)』が発売されます。ライヴ音源だけでなく、今回のイベント主催者DOOM!が撮影・編集したヘヴィー級のボリューム映像DVDが、湯浅湾の魅力をがっつりと伝えています。
ぜひお楽しみに!

井川 拓