湯浅湾『浮波』

12/5(日)開催の関西上映先行イベント“shellsong~耳よ、貝のように歌え”の
スペシャルゲストのひとり、湯浅学さんについて少し紹介をさせて頂きます。
yuasamanabu.JPG
湯浅学さんは「音楽評論家」という肩書を付されることが多いですが、「湯浅湾」というフォーク・ロックバンドを率いて、歌とギターを担当されています。ひょっとしたら、湯浅さんの文章は読んだことはあるけど、音楽は聴いたことはないという方は多いかもしれません。僕もそうでした。途方もない音楽への憧憬を抱き続け、それを誰にも真似できぬやり方で言葉に発露してきた人間が、果たして自ら歌う必要があるのだろうかという疑念と不安があったのです。
湯浅さんが本腰を入れてギターを練習し歌い始めたのは、三十六歳のときだったと聞いています。もう既に「音楽評論家」としての地位を確立し、多方面から注目を集めていた時期です。にも拘わらず、書く仕事の量が減るのも知りながら、湯浅さんは歌い始めました。
「湯浅湾」の音楽を聴いたとき、自分の矮小な思いは見事に裏切られました。
「ふとある日…」と歌いだされる声は、語りかけてくるようでいながら、くぐもった滲みが耳に残りました。笑い涙を誘うほど情感豊かなのに、発散・解放はしてくれない。聴き終わると、しばらく何も手につかない。突然尿意を催したり、無性に腹が減ったり、不意に家族と話したくなったりしてしまうのです。だからこそ、「湯浅湾」は、フォーク・ロックバンドなんだと思うのです。生きることはどこを切ってもくだらなくやるせなく、だからこそいとおしいことを思い起せる、そんな音楽はそうざらにはありません。
“shellsong~耳よ、貝のように歌え”では、湯浅学さんに朗読にギターを交えたパフォーマンスを行って頂きます。
歌を歌わない湯浅学さんがどんな声を響かせるのか、ぜひ耳を傾けて下さい。

0da89041-s (1).jpg
※12月15日、湯浅湾のライブアルバム『浮波(フナミ)』が発売されます。ライヴ音源だけでなく、今回のイベント主催者DOOM!が撮影・編集したヘヴィー級のボリューム映像DVDが、湯浅湾の魅力をがっつりと伝えています。
ぜひお楽しみに!

井川 拓