朗読イベント 其の壱「大きな恵み」

12月23日は映画上映後に、舞踏家・俳優の井澤佑治さんに、朗読を行って頂きました。
朗読の題目は、小川国夫の処女作『アポロンの島』に収録された「大きな恵み」という作品です。
井澤佑治さんは、元々本映画製作者仲田恭子が演出した舞台「逸民」で”鳥”の役をなされており、小川国夫作品に関心を持っておられました。(因みに「逸民」での役どころは”鳥”ですから、勿論台詞はなく、むごたらしく殺される役を演じられたそうです。)
そんなエピソードからも伺えるかもしれませんが、椅子に座ってマイクに向かうだけの佇まいから発せられる言葉にも強い身体性が迸っていました。
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朗読にとりたてて身振りが付されていたわけではありません。ただ作品に描かれた言葉を丹念に追う、それだけを佑治さんは実践されていたのだけかもしれません。
だからこそ、「大きな恵み」で描かれた闘牛という儀式の厳粛さ、人が生き物をあやめる時に直面せざるをえない”震え”を全身で受けとめ、それを声で表わし得たのではないでしょうか。
劇場が闘牛場と化した一瞬があったと感じたのは僕だけではないでしょう。
小川国夫のタイトルの付け方は、どれも直截的、即ち描いた対象そのものであると僕は思っています。思わせぶりな題はつけない。
「大きな恵み」も然り。今日の佑治さんの朗読を聴いて改めてそう感じました。
肉声を通して、小川国夫作品の直截性を体感した貴重な機会となりました。
※朗読イベントは、12月25日、26日にも実施されます。
ご期待下さい。
井川 拓