小川国夫の「ハシッシ・ギャング」

映画『デルタ 小川国夫原作オムニバス』は、「デルタ=三角州」という
タイトルの通り、3篇の短篇映画からなるオムニバスです。3篇とは、
「誘惑として、」(与那覇政之監督)
「他界」(高野貴子監督)
「ハシッシ・ギャング」(小沢和史監督)
で、以上のような順番で上映されているので、
いつもこの順番でご紹介しているのですが、たまには逆からいきましょう!
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原作である小川国夫の短篇小説「ハシッシ・ギャング」は、
もともとは雑誌『文学界』1996年1月号に「薬(ヤク)の細道」というタイトルで
発表されたあと、改稿&タイトルを変えて1998年8月に文藝春秋から
短篇集『ハシッシ・ギャング』の表題作として発表されたものです。
簡単に言うと、これは幻聴の話、幻聴を聞く人たちの話です。
幻聴を追いかけていると、語り手にある女の声が聞こえはじめて、彼は
「あ、これは恋だ」と思うのです。
でも、その女は幻聴の音のなかでしか現われません。
実は少し前に、自分のもとから去ってしまった女の声なのです。
もう、探す手だてはないようです。
彼はまた、墓場でハシッシを吸って幻聴と戯れて(?)いる“傾聴族”と仲良くなります。
(どうやら、ラジオのチューニングが合うように、
 その墓場では幻聴がよく聴こえるようなのです)
“傾聴族”のひとり(木南慈平)にそそのかされて、彼は女を探す旅に出ますが…。
短篇集『ハシッシ・ギャング』は、現在、絶版状態ですが、
2004年に発行された小川国夫自選短篇集『あじさしの洲・骨王』(講談社文芸文庫)
収録されているものが、現在でも入手可能です。
下窪俊哉